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Science

MeVガンマ線天文学の可能性

ラインガンマ線

超新星爆発時における元素合成により生成される放射性同位体や励起状態の原子核からは、特定のエネルギーのガンマ線が放射されます。
このガンマ線分布を測定することで、元素生成のプロセスや生成された元素が宇宙に広がっていく様子が解明されると期待されています。

  • 超新星残骸からの核ガンマ線の測定から、超新星爆発時における元素合成のプロセスを解明する
  • 銀河面に広がる長寿命の放射性同位体の分布を測定することで、元素の宇宙拡散にせまる
  • 近傍の銀河などの核ガンマ線の総量を測定し、超新星残骸の出現率・重元素生成率など銀河・星形成の情報を得る
  • 天の川銀河内の電子・陽電子対消滅線の分布を調べ、陽電子起源の特定から暗黒物質の探索を行う

連続スペクトル

宇宙におけるガンマ線放射のほとんどは、連続的でなめらかなスペクトル構造を持っています。他の波長での観測結果と一緒に考えることで、放射機構を特定することができ、非常に遠くにある天体での物理状態をつぶさに調べることが可能です。

  • 高エネルギー陽子が分子雲に衝突した際生成する、中性パイ中間子からのガンマ線測定から、100年以上に渡って未解決な宇宙線起源の解明に決定的な情報が得られる
  • 銀河や銀河団内の宇宙線からのガンマ線の観測により、銀河内での星生成率・銀河内ガス及びハローの総量・銀河団内ガスの総量が解明する
  • 多くの活動銀河核からの高エネルギー光子の放射ピークを測定することで、活動銀河核でのエネルギー量が決定できる
  • ブラックホール・中性子星の降着円盤等からのガンマ線観測から、高エネルギー現象を探る重要な信号が測定できる
  • 宇宙初期の密度揺らぎから生成されたPrimordial Black HoleがDr. Stephen Hawkingにより予言されており、その消滅の際にMeV領域での熱的ガンマ線放射が予想されている

偏光度・偏光方向

  • 偏光度・偏光方向の測定から、非熱的な放射が主であるガンマ線の放射機構にとって重要な磁場の構造を明らかにする
  • ガンマ線バーストの偏光の時間変化から、その爆発メカニズムを明らかにする

MeVガンマ線による天体観測の現状

sensitivity.pngMeVガンマ線天文学を切り拓くため、COMPTEL(1991-2000)というガンマ線望遠鏡が観測を行いましたが、観測できた定常天体はわずか30個程度に止まっています。
これは宇宙空間では予想以上に雑音が多く、想定した検出感度を達成できなかったためです。
MeV領域のガンマ線観測においては、宇宙線と筐体との相互作用や地球大気からのガンマ線・中性子など多数の雑音事象が存在し、観測自体が非常に難しいのです。
その後、INTEGRAL衛星(2003-)により観測が続けられていますが、X線やGeV/TeVガンマ線領域と比較しても、その観測は進んでいません。
したがって、早急なMeVガンマ線での全天天体探査が望まれている状態にあります。
そのためには、以下の性能を持つ検出器が必要です。

  • 数百keVから数MeVに渡る広帯域
  • 全天探査を実現できる広い視野
  • ガンマ線天体を特定するための角度分解能
  • 雑音事象を徹底的に排除した高品質なガンマ線画像取得能力

我々の研究室では、この様なガンマ線望遠鏡を開発し、気球を用いた実験でその能力を実証する、という研究を行っています。